奥又白池より前穂高

ザックの重量 ?

歩いた時間 ?

 

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9:30河童橋を後にする。

槍や涸沢帰りかそれぞれの想いを胸に帰路急ぐ人が多い。

徳沢は座る場所も無いほど盛況。

靴紐やザックを締める。

一人奥又を目指す。

なかなか厳つい枯れ沢出る。

ココか?

沢よりつめる。

順調に進む。

沢は狭まり藪になる。

最後はヘロヘロ。

藪を抜けると多分白池。

14時過ぎ池に着く。

晴れると前穂が見えるらしい。

曇りで裏山感拭えず。

紅葉もいまいち。

雨が降りはじめる。

16時には床につく。

目が覚めて時刻を確認すると19時。

雨が降っている。テントの中は結露でびしょびしょ。

休み明けの仕事が気になり先を急ぐことに。

視界は無いが経験上問題無いと判断する。

20時過ぎ出発。

視界が悪くどこを歩いているのか分からず池の周りを周ってしまう。

止めるか?

いや、もう少し歩いてみるか...。

踏み替え点はどこだ?

ヤマップより現在地を確認する。

分からない。

このまま尾根伝いに歩くこととする。

気をつけないと滑落するような起伏に富んだ狭い谷を抜ける。所々ハングする岩壁現れる。乗越せない場所は回り込んだりしてトラバースする。

ルートから外れないよう時折現在地を確認する。

雨がだんだん強くなってきた。

完全にハングした壁に突き当たる。しかも逆層。持ってきたカムは役に立たない。クラックもない。ピトンを使う。

どうにも進めない。寒い。

「諦めるな...」「絶対に安全に帰るんだ」

ガタガタ震える。

撤退を考えるに今がその時かも...。

戻るにもきた道を正確に戻れるか?

登りは良いがあの狭く起伏富んだ沢を降るのは閉口する...。嫌なイメージしか湧かない。

携帯の電池は残り少ない。現在地が分からなくなったらアウトだ。

概略図によると確か今いるあたりのどこかから枯れ沢沿いに行けば逃れるはずだ。

ピトンを打った壁に雨風をしのげそうな場所があったはずだ。そこで一旦考えをまとめよう。

尻にサーマレスをひいて、レスキューシートを頭から被る。震えが止まらない。

深夜1時前後。

岩とハングした壁の間で雨風を避けレスキューシートを被りガタガタ震えていた。

テントを張れそうな場所に戻るか?

視界も悪い。ベッドランプは闇しか映さない。

ヤマップで確認出来るこの場所は恐らく3.000m。

頂上はすぐなのに。

どうしても弱点が見つけられない。

ピトンを打って上がってきた壁を降りるのは気が重い。でも日常に帰るためにはここにいてはダメだと思う。戻るしかない。

 

来たときに見たと思える場所だと思う。

風が強い。

ずぶ濡れの中で濡れてぺったりしたテントを広げる。

あ、目の前をゆっくりとテントポールが流れていく。

「終わった...」

いや、まだだ。

途中で引っかかっているかも。

探すか...。

あった!

探してみるものだ。

草付きに奇跡的に引っかかっていた。

戻ると今度はアンダーシートが飛んでいる...。

シートが無いと生地が薄いから破れる。破れれば入水を許してしまう。

視線を足元にやると斜面にアンダーシートが見えた。

降りるか?

バタバタと丘にあげられた魚のようにテントが暴れる。ポールをスリーブに差し入れると何故か奥まで入っていかない。もう一度試してみる。

ハハハ。

スリーブの途中からポールが破れ出ている。

¥30.000。

分かってはいたが、使えないだろコレ。

ヘリテージ、エマージェンシードーム?

何とか設営するも兎に角狭いテントのため両側の壁がぺったり体にくっついてくる。

仮眠をとった時にすでに雨に濡れているテントはビショビショに濡れた靴の中と一緒。

暖をとろうとストーブをつけるも狭いからテントの壁を燃やしそうで怖い。

寝袋を使うか悩む。濡れた身体を入れたら直ぐにペッチャンコだろ。

ガタガタ震える。

兎に角帰るんだ。

構っていられない。寝袋に身体をねじ込む。

平とはいえない場所のため身体がテントの中で片側にずり落ちる。

何もかも不快だ。

雨風よ止んでくれ。

寒い。

朝まで長いな...。


※携帯の電池がもたないと困るので電源をこまめに落としていた時にヤマップはどこかのタイミングで終了させてしまう。


ビバーク後、朝までウツらウツらしながら日の出を待つも視界は相変わらず抜けなかった。ビバーク箇所西側?より無理やり下降する。滑ったらアウトな浮き石だらけの急な谷を祈る気持ちで無理やり下降し続ける。途中切れ落ちていたら?地形を読みながら時折トラバースする。

だんだん斜度が落ちてくる。

高度も下がってきたかに思える。

開けた場所に出る。

見覚えのある風景。

急いで斜面を駆け上る。

白池だ!

後は帰るだけ。

慎重に降る。

パノラマコースが見える。

戻ってこれた...。


肩に食い込むザックを背に梓川沿いの遊歩道を黙々と考えながら歩く。


カムは役に立たない。ましてやナッツなんて使う気にならない。ソロじゃロープも頼りない。

GPSは必要だな。

ピトンは重いからそんなに持てない...。

天候読めない時はテントはダブルウォールだな。

沢屋がしてるリストバンドは良いかも。

靴はアルパインシューズの方が良いな。


明神で一息つく。梓川沿いを散策する観光客や一般登山者を眺めながら帰途につく。


ビバーク後の下降に使った谷や白池に戻るまでのルートはA沢と呼ばれ落石多発の登路としても危険な場所らしい。もう少し時間をかけて整理したい。


とにかく初見でザックリしたアイデアで3.000mまでは詰めた。リスク承知で突っ込んだが肝が冷えた。